“せめて、人間のままで死にたい シーズン3”


(あ、)


特にする事もなく、無心でカチャカチャとテレビのリモコンを弄っていた私ー丸谷 紫苑ーの目に、いつか皆で観ていたホラードラマの題名が入ってきた。


「あれ、もうシーズン3始まったんだっけ?仁さーん、暇なら一緒にホラードラマ観ようよー!」


もこもこの靴下を履いた足を地面につけた私は、リビングのドアを開けて大声で2階に向かって呼びかけた。


「んー?もう紫苑ちゃん18歳でしょーう?そろそろ成長したらどうなのさ…それと敬語はどこ行ったの敬語敬語ー」


上階から、すぐに間延びした口調が落っこちてくる。



私がこの家に来た3年前からずっと、仁さんー伊藤 仁ーは私に敬語を使ってくるように強要してきていた。


だからいつもは敬語で会話しているけれど、たまにこうして弄って反応を楽しむのも趣味の1つになってしまった。


「…仁さん、怖いから一緒にホラードラマ観ませんか?」


「それで良し」


満足そうな声が聞こえてきたかと思うと、階段を下りてくる音がして、キャラメル色の髪を綺麗にセンター分けした男性が姿を現した。


上下ジャージ姿で普通なら芋男にしか見えないはずが、俳優も手で仰ぐ程の美貌を兼ね備える仁さんの場合、モデルと勘違いしてしまいそうな程の麗しさを放っていた。