何て寛大な心の持ち主なんだ、と感心する暇もなく、


『日本の憲法が遅れてるって事は、…養子縁組…の件は置いといて、俺らは正真正銘家族なんだよね?なら、俺は琥珀と結婚できるって事だよね?そうなるよね!?』


やばーい、俺琥珀の為に頑張っちゃうから!帰国したら挙式だよ!、と、大也の振り切れた様な明るい声が聞こえてきた。


『…だから何でそうなるんだ、どう考えてもおかしいだろ』


『やー大丈夫大丈夫、俺が式場の予約取っとくから』


琥珀と大也の会話はいつもと何ら変わらなくて、ただ、大也がネガティブ思考から完全に切り替えられた事だけは伝わってきた。



(良かった、皆1つになってきてる…)


『よし、じゃあこのまま一気に45階まで行こう!…紫苑、ありがとう』


ほっと胸をなで下ろした時、湊さんが皆の覇気を呼び覚ます台詞を口にした。


口々に皆が同意の声をあげる中、無茶をしてでもチームに貢献出来た私も笑顔を作る。


そして、その高まった気分のまま階段を上がろうとした時。





『お前らあああァァアア!』



イヤホンが壊れてしまうのではと思ってしまう程の大声が、全員の耳を貫いた。



(うわっ、鼓膜破れた!)


私は、思わずイヤホンを耳から離して耳を手で塞いだ。