「そもそも価値のない人間なら、湊さんは航海を保護したりしないはずだよ。そのくらい分かるよね?覚醒したんなら、ちょっとは頭使って考えてよ!」


『……、』


まさに今、敵の首を折り曲げた航海の手から力が抜けた。



「湊さんも!…こんな事、リーダーに言える立場じゃないけど…」


敵の懐からスタンガンと催涙弾のようなものを見つけた私は、それをポケットにしまいながら口を開く。


「この頃ずっと表情が暗いから心配してたんですよね…。あんまり分からないけど、隠し事するの疲れませんか?…ずっと抱えてたら、いつか壊れちゃいますよ」


『っ……、』


敵に容赦なく弾をぶっぱなした直後の湊が、銃から漂う煙に巻かれながら銃を取り落とした。


「リーダーだからって全部引き受けて抱え込んで、…そんなの、こっちが辛くて見てられないです。壊れる前に、私達に何でも相談して下さい!」



隠し事が多くて過去も悲惨で、一緒に生きていく中でずっと家族と愛に飢えていた怪盗mirage。


蜃気楼みたいに儚くて脆くて、それでも本当は強い事を私は知っている。



「…私は、もう皆と離れ離れになりたくないの…」


それは物理的距離ではなく、心理的距離。


(駄目だ、タラレバタラレバ言うんじゃなくてちゃんと伝えないと)


皆の離れた心を1つにまとめないと、今回の盗みは成功しない。