(……駄目だ、皆の事を止めないと)


直感でそう感じた私は、思わずイヤホンを押さえて口を開きかけたものの、


(違う、こんなんじゃ届かない)


下唇を噛んだ私は、ひとつ息を吐いて同年代の家政婦の方を向いた。


「笑美ちゃん、1人でドローンの操縦と射撃出来る?」


「えっ…?」


驚いたように私の方を向いた彼女は、私の目を見て何かを悟ったようで。


「もちろんでございます。…お気を付けて、紫苑様」


怪盗mirageに仕える忠実な下僕、いや家政婦らしく、深々と頭を下げた。


(ありがとう)



そして。


「…私、皆の所に行く」


そう言ってから、行動は速かった。


リムジンのドアを開け、外へ飛び出した私は一直線に皆の居る建物に向かって走り出した。


「ちょおい!何してんだ紫苑、戻れ!」


我に返った銀ちゃんが叫んできたけれど、それは虚しく消えて行く。


『紫苑何処にいるの?今すぐ車に戻って!』


私が外に出た事を悟った湊さんの焦った声が、右耳から左耳へと抜けていく。


「私、今そっちに向かってます。湊さん達は何階にいるんですか?」


『チビ、俺らに構うな今すぐ銀河の所に戻れ!ここはお前には危険過ぎる!』


今まで一度も会話に介入してこなかった琥珀までもが、慌てたように私を止めようとする。