「あー分かった、琥珀がどう思ってるか知りたいんでしょ?ちょっと待ってね、琥珀ー?琥珀聞こえるー?」


ポンと手を叩いた俺は、イヤホンを手で押さえて愛する人の名前を呼んだ。


『…んだよ』


ドゴオオォン…という、何かが崩壊したような音と共に、琥珀の声が流れ込む。


「琥珀は、仁がこのままずっと壱のままでいて欲しい?それともまた仁に戻って欲しい?」


ストレート過ぎるその質問は、琥珀のみならず無線機の電源を付けているメンバー全員の元へ届いた。


しかし、空気を読んで誰も何も発言しない。



そして数秒後、


『…あー、』


面倒臭そうなため息をついた琥珀の低い声が、全員の鼓膜を揺らす。



『……俺は何でも良いが、もうあいつとは話したくない』



それは、主人格ではない壱が現実世界に留まる事に対する許可。


(やったあ!)


仁にはこのまま眠っていて貰いたい、闘いの場でも日常でも必要なのは壱なのだから。


嬉しくて目を輝かせた俺とは裏腹に、




「っ……、!」




隣でその会話を聞いていた壱が、愕然と目を見開いた。