「銀ちゃん、外の景色でも見てちょっと休憩したら…?目疲れない?」


信号が赤になり、リムジンがゆっくりと停車したのを感じつつ、車に乗ってからずっとパソコンを弄り続けている銀ちゃんに労りの言葉をかけたものの。


「大丈夫だ、わざわざありがとな。…それに、アメリカの景色なんて恐れ多くて見れたもんじゃねえ」


少しでも油断すると相手側からのハッキングを制御出来なくなるのか、彼は蛇のように長細いグミを口に入れながらそう答えた。


最後の台詞がどうも自虐的に聞こえたから、心の中で首を捻ったものの。


「そっか…こちらこそありがとう」


その積極的な仕事ぶりに対して感謝の言葉を伝えると、彼はグミを一気に噛み切って片頬を上げてみせた。



「皆、あと少しで着くからいつでも出れるようにしておいて。殺すのはあんまりよろしくないけど、リーダーの2人に関しては許可する。全員怪我には気を付けて、もし何かあればすぐに連絡する事」


「はぁーい」


流れゆく景色と、窓ガラスに反射する大也の白く美しい髪をしばらく眺めていた私は、我らがリーダーの声で我に返った。


それに対して間延びした声で返事をするのは、もちろん何の緊張感も持っていない大也。


長いグミを口から垂れ下げたその姿は、現役ホストというよりただのチャラい男そのものである。