『無理じゃねえ』


その時、電話口から流れ込んできた鬼のように低い声。


その一言を聞いただけでリンちゃんは姿勢をただし、伊織はスマホを落とさないように震える手に力を込めた。



もちろん、声の主は琥珀である。



『これを頼める奴は、メンバーであるお前しかいない。出所の件に関しては中森が責任を取るから、お前は今すぐ家に行ってパソコンを持ってこい。いいな』


何の反論も許さないと言いたげな気迫が、アメリカと日本という遠距離もお構い無しに伝わってくる。


「そんな、…でも……」


裏切り者の自分が行ったところで、合わせる顔なんてない。


口ごもる伊織と、


「ちょっと琥珀さん、何で私に押し付けるんですか!連帯責任にしますから!」


鉄格子を掴んだリンちゃんが、先輩警察官に負けず劣らずの声量で叫ぶ。


『とにかく来い。…おい湊、お前最後の飛行機のチケットはどうした?』


しかし、伊織達の言葉を全て無視した琥珀は、傍に居るのであろう湊へ疑問を投げかけて。


『ああ、それなら紫苑に…』


「それ、もしかしてビジネスクラスのやつ…?俺、持ってるよ…」


湊の返事に被せるように口を挟むと、