「……うん、居るよ」


銀河と話すのなんて数年ぶりで、良く分からない感情が脳を支配して上ずった声が漏れる。


『よし、じゃあこれから話す事を聞け。一言も漏らすんじゃねーよ』


次の瞬間、銀河の声は狼のように低くなった。


怒られる、と覚悟したものの。


『お前は知らないと思うが、今俺達はアメリカに居る。で、明後日に怪盗フェニックスのアジトに盗みに入る予定だ。
そんで、さっきまでフェニックスのアジトをハッキングしてたんだが、逆ハッキングされちまった。このままだと俺のパソコンはお陀仏だ。……言ってる意味分かるか?』



自分の予想の斜め上をいく台詞が聞こえてきた。


え、フェニックス…、と、鉄格子の向こうではリンちゃんが放心状態で呟いている。


前半の部分は紫苑ちゃんからの手紙に書いてあったから知っていたものの、後半に関しては初耳だ。


(逆ハッキング…?それってやばいんじゃないの、?)


思わずスマホを耳から離してその黒い画面を穴が空くほど見つめた伊織は、


「分かるよ、…逆ハッキングって、それ大丈夫なの…?」


震える声で尋ねた。


『はっきり言うが、大丈夫じゃない。このままだと非常によろしくない』