「フェニックスのハッカーの力は思ったより強い。このままだと、決行日までにパソコンの寿命が来るかもしれねえ。…だが、家にはもう1台予備のパソコンがあるんだ。それを決行日までに誰かが此処に持ってきてくれれば、勝ち筋は見えてくる」


(予備のパソコン…?)


銀ちゃんが愛用していたのは今ハッキングされかかっているこのパソコンだったから、まさか予備のパソコンがあったなんて知らなかった。


「まさか、それを伊織に持ってきてもらおうって魂胆か?冴えてるな」


短い説明で全てを理解したらしい壱さんが、感嘆の声を上げて膝を叩く。


「そのパソコンが手に入れば、またハッキングし直せるって事ですか?でも、間に合うんでしょうか…」


続いて、航海の不安げな声が私達の居る部屋を包み込んだ。


「当たり前だろ」


しかし、そのどんよりとした空気を一瞬で吹き飛ばしたのは、私達が天才と崇める銀ちゃんで。





「次は成功する。俺を舐めんな」





狼と呼ぶに相応しいその両眼は、獲物を捕える寸前の様にギラギラと光っていて。


この人が、本当に先程航海と能面の様な顔をしていた人と同一人物なのか疑問に思ってしまいそうだ。


(さすが銀ちゃん…!)