(え？)


銀ちゃんの声からその人の名前を聞いたのは久しぶりで、私は耳を疑った。


｢は？｣


｢お前は今伊織と連絡が取れるのか取れねーのか、どっちだ？｣


今まで一瞬たりともパソコンから目を離さなかった彼は、琥珀の不可解そうに聞き返す声を聞いて目線のみを上に上げた。


その声は切羽詰まっていて、怪盗フェニックスのハッキングスキルが彼に負けず劣らずの強さだという事が容易に想像出来る。


最初こそ言葉に詰まった様子だった琥珀は、その様子を見て我に返ったらしく、


｢…中森を通してなら連絡は出来るが、何でだ？｣


まだ腑に落ちない様子で疑問を投げかけた。


｢よし、今すぐ中森に電話しろ｣


銀ちゃんからの上から目線な指示を聞いた現役警察官は、俺を何だと思ってるんだ…、等とぼやきつつもスマホを取り出し、すぐに中森さんに電話を掛け始めた。


｢待って待って、どういう事？何で伊織？｣


その様子を傍観していた大也が、焦ったように彼に尋ねる。


その気持ちは私も分かる、いきなり伊織の話が出てきて混乱しているのは彼だけではないはずだ。



銀ちゃんは、困惑のせいで動きを止めた私達を長い前髪に隠れた目で見回し、口を開いた。