「…いや、ハッキングの事は俺が1番よく知ってる、これは明らかにそれだ。…だが、俺様のパソコンをハッキングするなんて良い度胸の持ち主じゃねーか」


内心絶対に焦っているはずなのに、プロ意識の高い彼は大きく息を吐いて舌打ちをして。


「…どっちが本物の天才ハッカーか、思い知らせてやるよ」


ふっと不敵な笑みを浮かべたかと思うと、いつもの3倍のスピードでパソコンに何かをタイピングし始めた。


パソコン関係の知識がない私達は、ただただ彼の行動を見物しているだけで。


「銀河、作戦会議は続けてもいいかな…?それとも、僕達は黙ってた方がいい?」


銀ちゃんの集中力を切らさないようにと、湊さんが小声で尋ねる。


しかし、完全に自分の世界に入ってしまった銀ちゃんは、


「…ここをこうして……」


「いや違うな、このファイルを…」


と、口の中でぶつぶつと独り言を呟きながらパソコンを操作し続けていて。


結局、私達は銀ちゃんから指示があるまで休憩を取る事になった。



と、そのはずが。


「おい琥珀」


いきなり天才ハッカーが警察官の名を呼んだことにより、その休憩は数分で終わりを告げた。


「ん?」


「お前、伊織と今すぐ連絡取れるか?」


銀ちゃんの方を向いた琥珀の眉が、怪訝そうにひそめられる。