「そんなに急がなくてもいいのに」

 深い夜色に、星が煌めく髪。

 黒のセーターにマフラーを巻いている。

――だって。星が眠ったら、『君』に逢えないんだよ。

「星屑(こんぺいとう)、ほしい」

「明日香が望むなら。いくらでもあげましょう」

 手の中に、鮮やかな星屑が落ちてくる。それは夢のような、物語の主人公にでもなったような不思議な気持ち。

「……ずっと夜だったらいいのに」

「それは無理だよ。朝が来るから夜があるし。夜が去らなければ、朝は来ない」

「だって朝がくれば、君は消えてしまう」

「消えるわけじゃない。見えなくなるだけ。でもいつでもオレは、明日香の一番傍にいて見守ってる」


 夜明けが近づく度君を想う。

 胸が痛くて、張り裂けそうだ。


 君が消えてしまう前に、告げてしまえばいいのに。その一言さえ、告げられない。



 胸に降るこの星屑が、はやく消えてしまえばいい。