「俺の家、近くなんですよ。タオル貸すんで来ませんか?」

「え?!」

「あ、変な想像しないでください。俺、海上保安官だって言ったじゃないですか。絶対に襲ったりしないって誓います」


 右手を顔の高さまで上げて宣誓のポーズをする彼の姿に、ちょっぴり笑いがこみ上げてきた。
 でも、たった今知り合ったばかりで家にまでお邪魔するのはずうずうしいと思う。私は迷惑をかけた側なのだから。


「まだ疑ってます? じゃあ……海保に電話して女性の同僚をここに呼びましょうか。保護するとなると、あれこれ聞かれますけど」

「呼ばなくてもいいです!」


 首を横に振りながら、スマホをいじる彼をあわてて制止した。
 ほかにも人を呼ばれたら、それこそ連れて行かれた場所で本格的な事情聴取になりそうだ。これ以上大ごとにはしたくない。


「だったら行きましょう。俺の家」


 いいのだろうかとためらったものの、男性が私のバッグと空き缶の袋を持って歩きだしてしまうので、ついて行かざるをえない。

 浜辺から一般の道路に出ると、彼は私を隠すように歩道の外側を歩いてくれた。
 真横に並べば、あらためて彼の体格の良さがわかる。
 身長は180cmを優に超えていて、肩幅が広くて胸板が厚い。ガッチリとした筋肉質な体だ。