「それはいいです。でもスカートの砂は先に落とさないと洗濯機が壊れちゃうから、洗面器を貸してください」


 眉尻を下げて申し出ると、彼は笑顔でバスルームの扉を開け、自由に使っていいと言ってくれた。
 申し訳ないとは思いつつも、私は開き直って砂を洗い流したスカートと靴下、下着を洗濯機に放り込む。

 彼の提案どおり、先ほど借りたバスタオルとパーカーを腰に巻きつけてリビングの様子をうかがえば、いつの間にか彼も濡れたジーンズを脱いで、スリムな形のルーム用パンツに着替えていた。


「琉花さん、お茶どうぞ。海水に浸かったから冷えたでしょ」

「……ありがとうございます」


 ローテーブルの上には湯呑みに入った日本茶が湯気を立てている。
 海の水は冷たかったので、温かい飲み物を欲している自分がいて。
 勧められるがままにお茶をすすれば、ほっこりとして体の芯まで温まる気がした。


「あ、腹減りません? なにかあったかなぁ」


 彼は静かに冷蔵庫を開け、淡々と中身をチェックしていく。


「冷凍ピザ発見! とりあえずこれで」


 私は湯呑みを手にしたままなにも言えず、手際よくオーブントースターでピザを焼く彼をボーッと見つめていた。
 純粋に人のやさしさが身に染みる。今の私が弱っている証拠だ。