「洗濯してるあいだ、俺のでよかったら貸しますよ。スウェットとか? ……って、嫌ですよね」


 私が返事をする前に彼は自分で勝手に結論を出して、その提案を引っ込める。


「そしたら……バスタオルを腰に巻いて、その上から今みたいにパーカーを巻き付けたらいいっすよ!」

「いや、あの……」

「洗濯機こっちなんで」


 そっと手を引かれれば、土足で上がるわけにもいかなくて、自然と靴を脱いで上がり込んでしまった。
 私を怖がらせないためなのか、“手を引く”と言ってもすぐに離れてしまいそうなほどソフトな触れ方で。
 そこに彼のやさしさを見た気がした。


「立派な洗濯機。今さらだけど、ひとり暮らしですよね?」


 驚いた。かなり高価格帯の洗濯機で、先ほど聞いたとおり乾燥機能も付いている。


「もちろんひとりですよ。仕事柄けっこうな頻度で洗濯するから、思い切って高いやつ買ったんです」

「へぇ」

「ついでにシャワー浴びるならどうぞ。バスルームはそっち」


 シャワーだなんてとんでもない。そうなると私はバスルームで全身素っ裸になる。
 さすがにそれは危機感がなさすぎるだろう。