「じゃあ、お言葉に甘えてタオルお借りします」

「中に上がってください。心配しなくても誓ったとおりなにもしませんし、怖がらせないように玄関の鍵は閉めないでおきますから」


 冗談ぽくニカッと笑った顔を目にしたら、この人は大丈夫だとなぜか確信が持てた。突然私を襲ったりはしないだろう。

 彼は清潔感のある黒髪に、はっきりとした二重の瞳、通った鼻筋と薄い唇の持ち主で。
 浜辺では暗くて気づかなかったけれど、明るい場所でよく見たら、けっこう整った顔をしている。


「でも……スカートとかびちょびちょなんで、床が濡れちゃうから……」

「それは気にしなくていいけど、」


 話している途中で、彼は急になにかを思いついたらしい。
 一瞬言葉を詰まらせたあと、パッと私の顔に視線を注いだ。


「そうだ、服を乾かせばいい。うちの洗濯機、乾燥機能付きなんですよ!」


 妙案だとばかりに力説されたが、私は即座に戸惑いの表情になった。


「着替えがないので……」


 目線を下げて自分のスカートをよく見てみれば、裾のほうに砂がたくさん付いてしまっている。
 本当は今すぐ脱いで、洗面器かバケツに水を張ってザブザブとゆすぎたい。