キッチンを借りて、お粥を作る。
そういえば、ポタちゃんはどこに行ったんだろう。
今日は一度も見ていない。






お粥を作り終え、寝室に向かう。
葵さんは、スヤスヤと寝息を立てている。
寝顔に見とれていると、葵さんが目を覚ました。


「ご飯できましたよ」
葵さんに見とれていたのを悟られないように、咄嗟に言う。


「ありがとう」
葵さんはベットから起き上がるが、ふらふらしていて座っているのも辛そうだ。

「辛かったら、ご飯後にしますか?」

「腹減ってる」

ぐーっとお腹の音が鳴った。

「じゃあ私が食べさせてあげます!」

お粥をスプーンですくい、葵さんの口元へ運ぶ。
少々不服そうな葵さんだが、よほどお腹がすいていたのか、口を開ける。

「おいしい…」

一口食べ終えると、また一口、スプーンですくって口元へ運ぶ。
無抵抗な葵さんは、子犬みたいだった。

つい無意識に葵さんの頭を撫でる。
頭を撫でられた葵さんはくすぐったいような表情をする。

「俺のこと犬だと思ってる?」
私の心の中は見透かされていたようだ。
葵さんは、なぜか照れている。




お粥はあっという間になくなってしまった。
葵さんに薬を飲ませる。










食器を片付け寝室に戻ると、葵さんは眠っていた。

そろそろ帰ろうかと思い、葵さんの枕元にお土産の紅茶を置いたとき――

葵さんに手を掴まれた。


「今日はありがとう」



葵さんの手から熱が伝わって熱いのか、私がドキドキして熱いのか、どっちだか分からない。

「いいえ、ゆっくり休んでください」

そう言い、手を離そうとしたら――

ぎゅっと手を握られた。
心臓の音がうるさいくらいにバクバクしている。

「手……冷た……」

葵さんはそう言い、私の手を握りながら眠ってしまった。