「延命は、いいと伝えた。」
いつの間にかICUから病室に
移されていた叔母の横で、
これまたいつの間に
やってきたのかの妹叔母と
父が並んで、説明してきた。
「!」
わかっている。
が、その意味が分かっていたの
だろうか?父よ。
「意識が戻らないわけだから。」
妹叔母が言えば、
父も同意する。
深夜2時の病室で、叔母は
亡くなっていた。
人は満ち潮の時に生まれて、
引き潮の時に逝くという話がある。
不思議なことに、
琵琶湖にも満潮と干潮がある
らしく、
そんな時
琵琶湖が震えるそうだ。
口には酸素マスクもなく、
体には機材らしきものもなく。
そういうことなのだと思った時、
なんとなく琵琶湖を
思い出して、
まるで
陸の上で溺れたような叔母に
手を合わせた。
叔母の幼馴染みな爺さま英雄が
体を張って助けて、
溺れた90代の老女が
救急搬送された奇跡に
病院が驚いた事案であっても、
結局溺れたのかと
夜の潮騒が遠く聞こえる
病室で思う。
けれども悠長に懺悔な気持ちに
浸ってはいれなかった。
「葬儀屋さんを
すぐ呼んでもらえ ますか?」
そう言って入ってきた
看護師さんに言われる。
「病院で懇意されてる処で
かまいませんから。」と
父が返事をする。が、
「こちらには、ありません。」
即答された。
だから、
自分達で呼んでもらいたいと
告げられ、
ロビーにパンフレットがあると
説明される。
「2時間後には、迎えにきて
もらってください。」
無情に言われた言葉に、
慌てスマホで時間を確認した。
本気ですか、、
ほとんど土地勘のない島で、
葬儀屋を今からみつける?
無茶だ!
急いで
降りたロビーで視たのは、
山の様な葬儀屋パンフレット。
どうやら、葬儀屋さんが
置いていくらしい。
県をあげて、お抱え葬儀屋制度を
撤廃しているとも
説明された。
「どうする?」「どうする!!」
丑三つ時とか言っていられない。
2時間後に、
叔母の亡骸と出るには、ものの
30分で葬儀屋さんを
決めないと間に合わない。
「葬式代、出せるの?通帳みつけ
たけど、
暗証番号わからんかったわ。」
出し抜けに、
妹叔母が一冊の通帳を出して
父に突きつけた。
亡くなった叔母の名前がある。
やってきて、叔母の家に
入ってやることが、それ?
確かに大切だが、
一瞬嫌な予感がする。
父はそれを横目に、
「病院に1番近いホールの処に
しよう。運ぶ距離で値段代わる
だろうから。火葬場も、
確か病院から近いはずだろう」
そう切り出して、
葬式代は自分が出すとも
妹叔母に説明すれば、
通帳を確認する様に
こっちに渡してきた。
どっちにしろ一旦凍結だ。
まずは葬儀屋さん!!
深夜の病院ロビーで無数の
パンフレットを
無心に裏返しては、
病院の住所に近い番地を
予想する。
まるでトランプゲームだ。
干潮で逝くなら
他にも同士がいてもいいのに、
ロビーには自分達のみ。
父も、互いに持つスマホの
充電が切れ切れだ。
妹叔母が、
葬儀屋に電話をする間
渡された通帳を盗み開く。
案の定、
そこには1か月前に入った
年金額しか残っていなかった。
教師をしていた叔母が、
いざという時のお金を
残していないはずがない。
叩き起こされたであろう
葬儀屋さんは、すぐに迎えの
搬送担架でやってきた。
島での葬式。
ミステリーばりに
嫌な予感しかしないのは、
自分だけか?
都会の夜にはコウモリが
飛んでいたりするけど、
1月の島の深夜には
氷みたいな月しか見えない。
天高く懐中電灯を立て竿に
ぶら下げて
島では迎え火代わりにする。
逝く魂があるよと、
云わんばかりに。
いつの間にかICUから病室に
移されていた叔母の横で、
これまたいつの間に
やってきたのかの妹叔母と
父が並んで、説明してきた。
「!」
わかっている。
が、その意味が分かっていたの
だろうか?父よ。
「意識が戻らないわけだから。」
妹叔母が言えば、
父も同意する。
深夜2時の病室で、叔母は
亡くなっていた。
人は満ち潮の時に生まれて、
引き潮の時に逝くという話がある。
不思議なことに、
琵琶湖にも満潮と干潮がある
らしく、
そんな時
琵琶湖が震えるそうだ。
口には酸素マスクもなく、
体には機材らしきものもなく。
そういうことなのだと思った時、
なんとなく琵琶湖を
思い出して、
まるで
陸の上で溺れたような叔母に
手を合わせた。
叔母の幼馴染みな爺さま英雄が
体を張って助けて、
溺れた90代の老女が
救急搬送された奇跡に
病院が驚いた事案であっても、
結局溺れたのかと
夜の潮騒が遠く聞こえる
病室で思う。
けれども悠長に懺悔な気持ちに
浸ってはいれなかった。
「葬儀屋さんを
すぐ呼んでもらえ ますか?」
そう言って入ってきた
看護師さんに言われる。
「病院で懇意されてる処で
かまいませんから。」と
父が返事をする。が、
「こちらには、ありません。」
即答された。
だから、
自分達で呼んでもらいたいと
告げられ、
ロビーにパンフレットがあると
説明される。
「2時間後には、迎えにきて
もらってください。」
無情に言われた言葉に、
慌てスマホで時間を確認した。
本気ですか、、
ほとんど土地勘のない島で、
葬儀屋を今からみつける?
無茶だ!
急いで
降りたロビーで視たのは、
山の様な葬儀屋パンフレット。
どうやら、葬儀屋さんが
置いていくらしい。
県をあげて、お抱え葬儀屋制度を
撤廃しているとも
説明された。
「どうする?」「どうする!!」
丑三つ時とか言っていられない。
2時間後に、
叔母の亡骸と出るには、ものの
30分で葬儀屋さんを
決めないと間に合わない。
「葬式代、出せるの?通帳みつけ
たけど、
暗証番号わからんかったわ。」
出し抜けに、
妹叔母が一冊の通帳を出して
父に突きつけた。
亡くなった叔母の名前がある。
やってきて、叔母の家に
入ってやることが、それ?
確かに大切だが、
一瞬嫌な予感がする。
父はそれを横目に、
「病院に1番近いホールの処に
しよう。運ぶ距離で値段代わる
だろうから。火葬場も、
確か病院から近いはずだろう」
そう切り出して、
葬式代は自分が出すとも
妹叔母に説明すれば、
通帳を確認する様に
こっちに渡してきた。
どっちにしろ一旦凍結だ。
まずは葬儀屋さん!!
深夜の病院ロビーで無数の
パンフレットを
無心に裏返しては、
病院の住所に近い番地を
予想する。
まるでトランプゲームだ。
干潮で逝くなら
他にも同士がいてもいいのに、
ロビーには自分達のみ。
父も、互いに持つスマホの
充電が切れ切れだ。
妹叔母が、
葬儀屋に電話をする間
渡された通帳を盗み開く。
案の定、
そこには1か月前に入った
年金額しか残っていなかった。
教師をしていた叔母が、
いざという時のお金を
残していないはずがない。
叩き起こされたであろう
葬儀屋さんは、すぐに迎えの
搬送担架でやってきた。
島での葬式。
ミステリーばりに
嫌な予感しかしないのは、
自分だけか?
都会の夜にはコウモリが
飛んでいたりするけど、
1月の島の深夜には
氷みたいな月しか見えない。
天高く懐中電灯を立て竿に
ぶら下げて
島では迎え火代わりにする。
逝く魂があるよと、
云わんばかりに。