春なら『さくら鯛』で、
秋なら『もみじ鯛』と呼び、
夏の蛸を『麦わらたこ』と呼ぶ。
田舎の島であって、
どこか食べ物には優美な
呼び方をするのは
かつて都に、その豊かな幸を
運んでいた名残なのか?
そんなのだから
鱧にいたっては
『べっぴん鱧』『黄金鱧』とも
形容されるのだから
どれだけ海洋食に
思いがあるのやら。
そうそう、
島ならではの美食がまだある。
冬眠へむかうであろう
晩秋に捕れる
『落ち鱧』。
都心なら
どれだけの値段がする?
という大きさの
太って堂々たる
太刀魚一匹を
野良猫が咥えて逃げるのが、
窓の外から見えて、
ちょっと、引いた。
『なんて、旨そうな、、』
そんな私の視線を
全く気にせず、
目の前の恰幅の良い
90代元漁師?
今も趣味漁師?な御仁は
70代に見えるダンディー様相で、
楽しそうに
島で捕れる魚を話す。
ハッキリいって隣の父と
変わらない年に見える
小麦色の肌つや。
で、、もって、、
昔は、モテたんでは?
と推測する
この御仁は仮にサトウと
しよう。
このサトウ元漁師を
見つけるのには、
父と本当に苦労したのだ。
というのも
いかんせん、この集落全員
サトウなのだ。
田舎あるあるだ。
『海に落ちた叔母を助けてくれた
サトウさんは此方ですか?』
こんな馬鹿な文言を口に、
軒並みサトウを当たりつくして、
漸くたどり着いた
叔母の恩人サトウ元漁師。
叔母は島で教師を定年まで
務め上げた為、
島で名前を言えば
たいてい、教え子らしい。
なので、
此の辺りでは『先生』で
通じる。
そして、
恩人サトウ元漁師を
探し歩くうちに、
島民から自然と
いらない?
情報が集まった。
とにかく、
今
目の前で快活にしゃべる
御年92歳の叔母の幼馴染みは、
海に落ちた叔母を
海に飛び込み担ぎながら、
海の中から
救助連絡を入れた強者なのだ。
『どんな90歳だよ、、』
ハッキリいって、
自分の子供が海に落ちて、
飛び込めるかと
聞かれたら、無理だ。
しかも、
消防隊員が飛び込み救助した
後、
病院で検査してその日に
退院している頑健さ。
「ちんまいころからしっとんでか、、」
息子が漁師を継いで、
同居する孫も成人近い。
島の聞き込みで聞いたのは、
今も若い頃も、叔母はマドンナ
だったとか。
島民いわく、
『そりゃ、先生溺れとったらあ
男ら飛び込んむでよぉ。なあ』
らしい。なんだ?それ?
けれども、
幼馴染みも
初恋の君を
この年で救い出し、ご満悦。
武勇伝が凄まじい。
元気で何より。
叔母の巻き込みになれば、
目も当てられない。
なにせ、
叔母は危篤でICU。
確かに
島で独り。100歳まで生きる
だろうと
思っていた叔母で、
まさか海に落ちるなんて
思わないけど、
捨て身で飛び込んでくれる人が
いてる事に
羨ましさを感じると共に、
いぶし銀の遠い日の
甘酸っぱい感情を見せられて
なんとも居心地悪い
照れを覚えて、
酸素マスクをする
叔母の姿を思う。
もう、
時間の問題だと言われる中、
同じく命を落としかねない
救助をしてくれた
恩人に、
お礼の品を抱えて
代々続く漁師家の玄関で
佇む、
父とわたしの耳に、
猫の声が妙に響いて
聞こえた。
秋なら『もみじ鯛』と呼び、
夏の蛸を『麦わらたこ』と呼ぶ。
田舎の島であって、
どこか食べ物には優美な
呼び方をするのは
かつて都に、その豊かな幸を
運んでいた名残なのか?
そんなのだから
鱧にいたっては
『べっぴん鱧』『黄金鱧』とも
形容されるのだから
どれだけ海洋食に
思いがあるのやら。
そうそう、
島ならではの美食がまだある。
冬眠へむかうであろう
晩秋に捕れる
『落ち鱧』。
都心なら
どれだけの値段がする?
という大きさの
太って堂々たる
太刀魚一匹を
野良猫が咥えて逃げるのが、
窓の外から見えて、
ちょっと、引いた。
『なんて、旨そうな、、』
そんな私の視線を
全く気にせず、
目の前の恰幅の良い
90代元漁師?
今も趣味漁師?な御仁は
70代に見えるダンディー様相で、
楽しそうに
島で捕れる魚を話す。
ハッキリいって隣の父と
変わらない年に見える
小麦色の肌つや。
で、、もって、、
昔は、モテたんでは?
と推測する
この御仁は仮にサトウと
しよう。
このサトウ元漁師を
見つけるのには、
父と本当に苦労したのだ。
というのも
いかんせん、この集落全員
サトウなのだ。
田舎あるあるだ。
『海に落ちた叔母を助けてくれた
サトウさんは此方ですか?』
こんな馬鹿な文言を口に、
軒並みサトウを当たりつくして、
漸くたどり着いた
叔母の恩人サトウ元漁師。
叔母は島で教師を定年まで
務め上げた為、
島で名前を言えば
たいてい、教え子らしい。
なので、
此の辺りでは『先生』で
通じる。
そして、
恩人サトウ元漁師を
探し歩くうちに、
島民から自然と
いらない?
情報が集まった。
とにかく、
今
目の前で快活にしゃべる
御年92歳の叔母の幼馴染みは、
海に落ちた叔母を
海に飛び込み担ぎながら、
海の中から
救助連絡を入れた強者なのだ。
『どんな90歳だよ、、』
ハッキリいって、
自分の子供が海に落ちて、
飛び込めるかと
聞かれたら、無理だ。
しかも、
消防隊員が飛び込み救助した
後、
病院で検査してその日に
退院している頑健さ。
「ちんまいころからしっとんでか、、」
息子が漁師を継いで、
同居する孫も成人近い。
島の聞き込みで聞いたのは、
今も若い頃も、叔母はマドンナ
だったとか。
島民いわく、
『そりゃ、先生溺れとったらあ
男ら飛び込んむでよぉ。なあ』
らしい。なんだ?それ?
けれども、
幼馴染みも
初恋の君を
この年で救い出し、ご満悦。
武勇伝が凄まじい。
元気で何より。
叔母の巻き込みになれば、
目も当てられない。
なにせ、
叔母は危篤でICU。
確かに
島で独り。100歳まで生きる
だろうと
思っていた叔母で、
まさか海に落ちるなんて
思わないけど、
捨て身で飛び込んでくれる人が
いてる事に
羨ましさを感じると共に、
いぶし銀の遠い日の
甘酸っぱい感情を見せられて
なんとも居心地悪い
照れを覚えて、
酸素マスクをする
叔母の姿を思う。
もう、
時間の問題だと言われる中、
同じく命を落としかねない
救助をしてくれた
恩人に、
お礼の品を抱えて
代々続く漁師家の玄関で
佇む、
父とわたしの耳に、
猫の声が妙に響いて
聞こえた。