屋上 aotoside
 あれから二週間。会話を最小限に抑えていたつもりだったが、あの少女はやたらと僕に絡んでくる。だから僕は彼女から逃げるように昼休みは屋上で昼食をとるようになった。
なるべく多く1人の時間が欲しい僕は今日も騒がしい教室を逃げ出し、足早に屋上へと向かう。この学校では、屋上が開放されている。南棟は日当たりも良く、去年の改装で綺麗になったのでまばらに人の姿がある。
しかしこの北棟は昼間影になっていることも多く、古びたこの校舎の屋上に人がやってくることはない。
階段を登って屋上の扉を開くと、さっきまで薄暗い階段を登っていた僕に嫌がらせをするかのように眩しい太陽が屋上を温めていた。
目が眩む。視界が元に戻ると、1人の少女が太陽に照らされていた。
騒がしくなければ構わない。僕がベンチに座るとその少女は、意外な人物だった。
その少女は僕が避けているあの少女だった。
僕が帰ろうとしたとき、彼女が早足で去っていった。
僕は膝の上に弁当を広げ、色鮮やかに盛り付けられた弁当を食べながらさっきの少女を思い出した。さっきの少女は後ろ姿では誰かわからないほどいつもと違う切ない雰囲気を纏っていた。それに、彼女は涙を流していた。女子同士のゴタゴタに巻き込まれたのか。彼女に興味はないが、彼女が流す涙にはすごく興味がある。
その日彼女の涙が僕の脳内から離れることはなかった。