桜雨  riruside
 窓の外を見ると昨日まで春の訪れを知らせていた桜は、色落ちて昨日までの可愛らしさよりも涙を流す少女のような切なさをその身に纏って昨日とは違う雰囲気で私を魅了する。
私とこの桜は似ているように感じていたけれど、今は私の方が少しだけ不幸であるように感じている。だってきっとこの桜は一度枯れても、来年にはまた今日と変わらない美しさを身に纏うことができるから。
私は生まれつきの心臓病により余命1年と宣告された。この桜のように再び咲くことはできない。病室で1人パソコンに向かい、高校からのメールに目を通す。お母さんにやっておきたいことはあるかと聞かれたとき私は学校に行きたいと言った。最期くらいみんなと同じ人生を歩きたい。そんな私のわがままをさまざまな制限をつけた上で許可してくれた。今日は大事なクラス発表の日。メールを開くと【2年3組23番 宮野梨月】とある。私が学校に行けるのは二ヶ月後から。早くみんなに会いたいと1人ときめいている。