「あれ、智明じゃん!」

「中村⋯どうしてここに?」

「私も今日午後から出勤で、モーニング食べに来たの!」

「へぇ、そうなんだ。あっちの席空いてるよ」

「奥様、私も相席でいいですよね?」

「えっと⋯それは⋯」

「困ってるだろ。会社以外で社員と仲良くするつもりはない。空いている席に移動してくれ」

「えー、酷すぎる。大学生の頃は私のこと、何度も抱いてくれたじゃん」

中村さんの一言で、その場が完全に凍りついた。

お料理を運んできてくれた店員さんまでも凍りつかせるとか、どんな破壊力だよ。

「お待たせ致しました〜⋯失礼致します!」

そりゃあ走って逃げたくもなるわ。

私だって店員さんと同じ立場だったら、全速力で逃げるもん。

「ねぇ、やっぱり私とより戻してよ。奥様、私に智明を返してくれますよね?」

「すみません、それはできません」

「別にいいじゃない。まだ子供もいないんだし、別れるなら早い方がいいわよ」

「中村、いい加減にしろよ。それに、店の人に迷惑かけんな」

「私、ちょっと先に帰るね。私の分は中村さんどうぞ」

「蛍、待って!」

これ以上その場に留まるのが嫌で、私は店を飛び出した。