「智明くん、ちょっと離れて欲しいんですけど」

「え、何? よく聞こえなかった」

「だから、離れて欲しいです!」

「無理に決まってんじゃん。今からあの夜のこと、じっくり語るんだから」

「語らなくて結構ですッ!!」

私のこと離してくれる気配はなさそうだし、なんとか自力で抜けられないかと試みるが、失敗。

ていうか、力強すぎません?

「蛍、さっきから何してるの? それでも抵抗してるつもり?」

「智明くんの力が強すぎるの! あ、UFO!」

「俺がそんな手に引っ掛かると思った? 小学生でも引っ掛からないよ?」

さっきも思ったけど、智明くんキャラ変わりすぎでしょ!

お父さんの前でどんだけ猫被ってたのって思うんだけど!?

「あの夜、蛍すごい魅力的だったよ」

「その話はしないでください」

「なんで? まだ思い出せていないみたいだし、俺がきちんと教えてあげる」

「もう思い出したので、結構です!!」

私がそう叫ぶと、智明くんは一瞬ぽかんとした顔して、それからニヤッと笑った。

あぁ、私のバカバカ、なんで思い出したこと認めてるの!

これじゃあ、自分から智明くんのペースに飲まれにいってるようなもんじゃない。

はぁ、数秒前の私を殴りたいです。切実に。