ヘルメース・トーキョーから少しずつ離れていく。

 近くのファッションビルのエスカレーターを上って、屋上庭園までやって来た。
 夕焼けがやけに眩しい。こうしていると、まるで恋人同士のデートみたいだな、なんて思う。諦めたはずなのに、まだそんなことを夢見てしまう。
 

「三橋さん。昨日は本当に、ありがとうございました」

「そのことはもう」

「いえ、片桐様のことではなくて。その……ストレリチアの花言葉を、教えていただいたこと、です」

 輝かしい未来。小鳥遊さんの未来も、そうでありますように。
 
 昨日の自分の台詞がよみがえって、恥ずかしくなる。夕焼けがあって良かった。絶対、今赤くなってる、私。
 
「それで、その……私も、あなたに贈りたい言葉があります」
 
「え?」