午後六時。仕事を終え、ロッカーで着替えを済ませると、私は従業員出入口へと向かう。「終業後」とは書いてあったけれど、私が何時に終わるか知らないのに、どうやって待っているんだろう? 

 まさか、ずっと扉の外で見張っているとか? いや、昨夜の私じゃあるまいし。
 
 出入口の扉を開けて外へ出ると、小鳥遊さんの姿があった。いつもと違う、私服姿だ。普段はピシッと整えている髪の毛も、ずいぶんとナチュラルだ。意外と前髪が長いんだと初めて気付いた。
 
「三橋さん。お疲れさまです」

「お疲れさまです。あの、いつからここに……?」
 恐る恐る尋ねてみる。

「ああ、今日は休みだったので。三橋さんがキリヤを出る頃を見計らって、来ました」

「そうでしたか。あの、手紙……」

「すみません、回りくどいことをして。でも、昨日あんな別れ方をしてしまった手前、直接声がかけられなくて……」

「そうですよね……。すみません、昨日。突然帰ってしまって」

「いや、こちらこそ……」

「…………」

 会話が途切れてしまった。
 先に口を開いたのは、小鳥遊さんだった。
 

「三橋さん。少し、歩きませんか」

「……はい」