小鳥遊さんが何かを言いかけたその時だった。
　
「あれっ、航(わたる)？　航じゃない！　やだ、久しぶりー！」

　人混みの中から、綺麗な女性が現れた。
　かと思いきや、小鳥遊さんの腕にぎゅっと飛びつく。

「れ、玲香(れいか)⁈ どうして……」

「出張よ出張っ！　航のホテル予約してるのに、気付いてなかったの？」

「いや、一件一件予約の名前まで覚えられないからな？　泊まるならそう言っておいてくれよ」

「ごめんごめんっ。ねねっ、仕事終わったんならこれからご飯行かない？　せっかく久しぶりに会えたんだし！　ねっ」
　

　突然、私は居場所が無くなった気がした。
　まるで、誰からも見放されたあの頃みたい。そんな気がした。
　
「——小鳥遊さん、私、失礼します。お疲れさまでした」

「えっ、三橋さん⁉︎　ちょっと待っ……」
　
　小鳥遊さんの顔を見れなかった。だって、きっと私、酷い顔をしているから。
　
　そっか、そうだよね。小鳥遊さんにはやっぱり、歳が近くて、ああいう綺麗な大人の女性が似合うよね。悔しいけど、私じゃ全然小鳥遊さんに釣り合わない。

そんなこと初めからわかっていたはずなのに。


どうして、こんなに胸が苦しいんだろう？