シャルロットの乗る馬車は順調に進み、予定通りダナース国の王宮に到着した。
王宮の正面口に停車すると、馬車の扉が開かれる。
開かれた扉から手が差し出されたのでシャルロットはそこに自分の手を重ねた。靴が石の床にあたりカツンと音が鳴る。
「ようこそいらっしゃいました。私は陛下の側近を務めております、セザール=ブラジリエです。以後、お見知りおきを」
目の前に現れたのはエディロンではなく、別の男性だった。
少し長めの栗色の髪は緩い癖があり、無造作に掻き上げられている。僅かに目尻が下がっているせいか優しげに見える目は、髪と同じ茶色だ。
「はじめまして。エリス国第一王女のシャルロット=オードランです」
シャルロットは丁寧に挨拶をしながら、自分の中の古い記憶を探る。
(セザール=ブラジリエ様……)
確か、エディロンが最も重用していた側近だったはずだ。