◇ ◇ ◇

 エリス国の王宮を離れて数日後、シャルロットは無事にダナース国入りした。馬車に揺られながら、ぼんやりと外の景色を眺める。農夫が牛に車を引かせて畑を耕しているのが見えた。

(この景色、懐かしいわ)

 この景色を見たのは一度目の人生のときだから、シャルロットにとっては随分と昔になる。すっかりと忘れていたが、いざ目にするととても懐かしく感じた。

(そういえば──)

 シャルロットはふと気付く。一度目の人生では国境のすぐ近くまでダナース国の国王であるエディロン自らが迎えに来てくれて、この景色をふたりで眺めた。

「今回は来ないのね」

 別に来てほしいとも思わないけれど、ちょっとしたことに一度目の人生との違いを感じる。