蝋燭の明かりを頼りに刺繍の針を進めていたシャルロットは、窓の外から聞こえてきた優雅なオーケストラの調べにふと手を止めた。
「舞踏会が始まったわね」
「そうみたいだね」
シャルロットの呟きに、同じ部屋にいた双子の弟であるジョセフが頷く。今日は、諸外国の来賓を招いた数年に一度の大規模な舞踏会が本宮で開催されているのだ。
「ジョセフ、いかなくてよかったの?」
「いかないよ。病弱で立ち上がれない設定なんだから、行ったらおかしいだろ」
剣を磨いていたジョセフは手を止めると、首を横に振る。
「それもそうね」
シャルロットは頷く。
「王妃様は僕が来なくてせいせいしてるんじゃないかな。諸外国に対してフリードだけを王子として紹介することができて、次期国王として地位が確固たるものになったって」
「ジョセフ……」