(お母様)
亡き母を思い、目頭が熱くなる。そして、このループはもう二度と起きないのだと悟った。
涙ぐむシャルロットは指先で目元を拭う。
「申し訳ありません。少し感傷に浸ってしまいました」
「…………。いや、構わない」
エディロンはシャルロットの手から髪飾りを取ると、それをシャルロットの髪に付ける。
「これから先、あなたのことを必ず幸せにする。六回分の人生の愛情を、あなたに贈ろう」
「エディロン様……」
胸がジーンと熱くなる。
遠回りをして六回分の人生の重みがあるからこそ、自分が望んでいた道はこの人の隣なのだと確信できる。
「六回分の愛情なんて宣言してしまっては、あとが大変ですわよ?」
「問題ない。シャルロットのほうこそ、覚悟したほうがいいな。俺に嫌というほど愛される」
「ふふっ。望むところです」
シャルロットとエディロンはお互いに見つめ合い、くすくすと笑う。
背後からは楽しげな音楽が漏れ聞こえてくる。
これから先の未来を、シャルロットは知らない。けれど、この人とならば大丈夫。
──未来はきっと、たくさんの幸せで満ちているのだから。
〈了〉