「ああ、そうだ。だが、そいつには俺以外が遣わされたから、俺はこいつについた」

 ガルは斜め後ろにちらりと視線を投げる。バチッとシャルロットと目が合った。

(今わたくし、ガルから『こいつ』って呼ばれた!?)

 怒りん坊な上にこんな口が悪い子だったなんて。唖然とするシャルロットを無視して、ガルは続ける。

「そうしないと、心配でいても立ってもいられないと言うから。こいつは驚くほど要領が悪いからな」
「心配でいても立ってもいられない? 一体誰の話をしているんだ」

 エリス国王は益々混乱した様子だ。

「それは、僕ですよ」

 背後にある謁見室の扉が開かれ、懐かしい声がした。

(え? この声って……)

 シャルロットは振り返る。

「ジョセフ!」

 そこには、一年ぶりに会う弟の姿があった。