シャルロットとジョセフが辛い境遇ながらも細々と平穏に生きていられたのは、魔法が上手く使えない出来損ないだったからだ。取るに足らない相手と思われて、王権争いにも利用されずに済んだ。

(お母様、もしかしてわたくし達を案じてわざと?)

 もうずっと昔に亡くなった母のことを思い、目頭が熱くなる。それと同時に、先ほど聞いたエディロンの言葉が脳裏に甦った。

『エリス国のドブネズミが』

 一度目の人生で、シャルロットに向けられた言葉だ。
 そして、エディロンが『どうして自分がシャルロットを殺したのかがわからない。間違いではないか?』としきりに言っていたことも。

(間違い……。もしかして、本当に間違えたの?)

 あの日は今日と同じ初夜。
 昨日、セザールがシャルロットの存在を気にして言いよどんだことや、今日のエディロンの様子から判断すると、恐らくエディロンはこの事件になんらかの形でエリス国が関わっていることを事前に把握していた。

 一度目の人生、決して部屋を出るなと言われていたシャルロットは、その言付けを破って部屋を出た。そして、物陰に隠れているところを殺された。
 今考えるとエディロンはシャルロットが隣の部屋にいると思っていたはずだし、ましてやあの状況でそこに隠れいている人物がシャルロットだとははっきり確認できなかったはずだ。