魔力の残痕を微かに感じる。
ハールス卿はダナース国の人間で、魔法は使えないはずだ。
そして、ものに魔法の力を付与してここまでの多くの物事に影響力を与えられる魔法使いなど、エリス国ですらごく僅かに限られるはずだ。
──それこそ、王宮お抱えの魔法使いくらいに。
(もしかして、エリス国が糸を引いているの?)
サーッと血の気が引く。
エディロンが震えるシャルロットの肩を抱き寄せる。
「大丈夫だ。まずはこの後処理をしないとだな」
そして、はっきりとこういうのが聞こえた。
「彼らにはきっちりと説明してもらおう。エリス国のドブネズミが」
異常を知らせる鐘の音に、ようやく警備の騎士達が駆け付ける。エディロンが彼らに支持を出し、ハールス卿が運び出されてゆく。シャルロットはその様子を呆然と見送った。
──ゴーン、ゴーン、……。
ときを知らせる鐘が鳴る。
日付が変わった。