エディロンは自分の剣先で、すっぽりと男の体をすっぽりと覆っているケープを捲る。ようやくはっきりと見えたその顔を見て、シャルロットは息を呑んだ。
「この人……」
「ハールス伯爵か」
エディロンがチッと舌打ちする。国内貴族からこのめでたい日にこのような事件を起こすものが現れたことに苛立ちを感じているのだろう。
(やっぱり!)
見覚えのあるその顔は、ハールス卿のものだった。驚きと同時に、シャルロットは疑問を覚える。
「どうしてハールス卿がこれほどまでの剣の腕を──」
先ほどの剣捌きはエディロンとほぼ互角に見えた。現役の騎士と遜色ないほどの剣の使い手であるエディロンと、小太りの貴族であるハールス卿が同じ腕前などとは到底考えにくい。
「ねえ、シャルロット。これ見て!」
ルルの叫び声が聞こえた。
そちらを向いたシャルロットの目に、床に転がっているハールス卿が使っていた剣が入る。剣の柄の部分に、丸い紋章が描かれていることに気付いた。