「とてもお綺麗でございます」
女性が体をずらすと、目の前に置かれた鏡が見えた。
陶器のように艶やかな白い肌、ほんのりとピンク色に色づいた頬、ぱっちりとした目、くるんと上がったまつげ。そして、全身を包むのはたくさんのレースがあしらわれた豪華な純白のドレス──。
そこに映るのは間違いなくシャルロットなのに、まるで自分が自分でないような気すらした。
「すごいわ、ありがとう」
シャルロットは鏡を覗き込んで歓声を上げる。普段あまり着飾ることがないので、目新しさもひとしおだ。
今日、シャルロットはダナース国の国王であるエディロンの妃となる。今はまさに、これから行われる結婚式の準備を行っているところなのだ。
シャルロットは下を向き、自分自身の姿を見る。レースのところどころには真珠が飾られており、一層の華やかさを添えている。
よくもこの短期間でここまで仕上げてくれたものだと、仕立屋の面々には感謝しかない。
これまでの人生の中で、ウエディングドレスを着るのはもう何度目だろう。叶うことなら、これが最後のウエディングドレス姿でありたい。