(それって……)
シャルロットのループは毎回、母親であるルーリスが亡くなって一年くらい経った頃──十二歳から始まる。そして、シャルロットの記憶が正しければ最後に参加した社交パーティーはループの開始する直前のタイミングだった。
(確かに、来賓の方とお話しした記憶があるわ)
社交パーティーに参加しろと言われたものの楽しむ気分になれず、会場の外でガルと遊んでいた。
そこに少し沈んだ様子の若い男の人が来たので、元気づけようと集めたトネムの実を渡した気がする。ちなみに、トネムの実はよくジョセフともぎ取って食べていたフルーツの名前だが、そのままだと酸っぱいのでジャムにするがおすすめである。
「陛下はわたくしと再会したとき、それがわたくしだと気付いていたのですか?」
「いや、気付いていない。実を言うと、最初に会ったときはあなたのことを王女だと全く思っていなかった。どこかの有力貴族の子供が遊んでいるのだろうと──」
エディロンはばつが悪そうに口ごもる。
それは無理もないだろう。社交パーティーで王女が会場を抜け出し庭園でこっそり遊んでいるなど、誰が想像するだろうか。しかも、シャルロットの格好は王女と呼ぶには質素なものだったと記憶している。