トムス商会を出たシャルロットは辺りを見回す。相変わらず、ダナース国の王都はとても賑やかだ。
(この景色ももう少ししたらお別れね)
ダナース国に来てから、シャルロットはエディロンとの婚約を破棄したあとどうやって生きてゆくかを考えた。その結果、教師になってみたいと思った。
幸い、シャルロットは六回も人生を繰り返しただけあって学校で教えるような勉強は一通りできるし、五度目の人生では刺繍で生計を立てたくらいなので裁縫だってできる。雇ってくれる施設はあるはずだ。
「そうだわ。孤児院のみんなに──」
せっかく城下に来たのだから、会いに行こう。シャルロットはお土産に大通り沿いの店舗でパンを買い、それを持って孤児院へと歩き始める。
孤児院の前では、子供達が地面に石で絵を描いて遊んでいた。
シャルロットは通りの反対側にいる彼らに向かって「みんなっ!」と呼びかける。子供達はシャルロットの声に気付き、一様に顔を上げた。