『やだわ、お姉様。知らないの? ダナース国は二十年ほど前に平民が蜂起して建国された国よ? つまり、あの国王は国王の格好をしているだけで元は平民なの』

 謁見室に同席していた妹のリゼットが小馬鹿にするように横から付け加えてきた。

(元は平民? それがなんの問題なの?)

 リゼットから意地悪を言われるたりされたりするのには慣れている。けれど、今回の言い方はエディロンのことはもちろん、ダナース国という国そのものを格下に見ているように聞こえ、さすがのシャルロットも不快感を覚えた。

『リゼット。隣国の国王陛下をそのように言うものではないわ』

 やんわりと窘めたシャルロットの顔を見て、リゼットは眉を顰める。しかし、すぐにハッとしたように口元に手を当てた。