その一時間後。シャルロットは城下のグランバザール大通りにあるトムス商店にいた。

「こちらがご依頼の品物でございます」

 メガネをかけた人当たりのよい店主が奥から黒い小箱を取り出す。それを開けると、中には、緋色の万年筆が入っていた。

「とても素敵ね」

 シャルロットは万年筆を手に取り、それを眺めて表情を綻ばせる。
 ボディには金の枠が嵌まっており、エディロンの雰囲気によく合う気がする。
 エディロンは普段の執務でもサインをすることが多いので、彼の仕事の手助けになればいいなと思う。

「ありがとう。とても素敵だわ」
「では、お包みしてもよろしいでしょうか?」
「ええ。お願いするわ」

 シャルロットは頷く。

(これをお渡しするときに、きちんとエディロン様とお話ししよう)

 シャルロットはそう決心すると、店主が包んでくれた小箱を鞄の中に仕舞った。