窓を閉めると、窓ガラスには反射した自分自身の姿が映っていた。髪に付けた金細工の髪飾りが目に入る。
その瞬間、急に頭が冷えてきた。
(そうだわ。わたくしったらバカね。悩むまでもないのに)
シャルロットは髪飾りに手を触れる。
約束の一年まで、あと数カ月。シャルロットが婚約破棄をしたいと言った理由は、結婚するとその日に自分が命を落とすからだ。
エディロンの言葉に頷くことは、即ちシャルロット自身の死を意味する。
エディロンはシャルロットを本当の妃にしたいと言ったけれど、どう転んだってシャルロットがエディロンの本当の妃になれることなどないのだ。頷いても、結局死んでしまうのだから。
(どうせ去るなら、後腐れがないものがいいわよね……)
もう、あんな風に無惨な殺され方をするのは絶対に嫌だ。
自分を愛してくれていると信じていた人に実は愛されていないと知ったときの絶望感は、二度と味わいたくない。
殺されるのは痛いし、苦しいし、怖い。