『ごめんなさい。こんな──』

 シャルロットは慌てて肩にかけられた上着を脱ごうとする。しかし、それは男性によって制止されてしまった。

『いいから着ていろ。寒いが、あそこに戻りたくないのだろう?』

 男性はシャルロットの横に立つと、テラスの手摺りに手をかける。シャルロットが驚いて男性を見上げると、男性はシャルロットを見返してきた。

 まるで夜空に浮かぶ月を思わせる、金色の瞳と視線が絡み合う。

(どこかでお目にかかったことがあるかしら?)

 その瞳にどこか既視感がある気がした。

『ところで、先ほど誰かと話をしている声がしたが?』
『ああ、あれはわたくしの使い魔です。小鳥の』
『使い魔? そうか。さすがは聖なる国家だな』

 男性は感心したように頷く。