(では、本物のシャルロット王女はどこだ?)

 彼女が偽物であれば、どこかに本物がいるはずだ。
 けれど、報告書にはそのことは全く書かれていない。
 一切の痕跡を残さず、本物の王女が雲隠れするというのも考えにくい。

(となると、やはりシャルロットは本物で、なんらかの方法であの知識や技術を得たのか?)

 考えれば考えるほど、わからない。

「あなたは一体、どんな秘密を抱えているんだ?」

 エディロンの問いかけは、シャルロットに届くことなく執務室に溶けて消える。

 最初は、エリス国の王女との結婚などただの政略結婚であり、嫁いできた王女と関わるつもりは一切なかった。むしろ、面倒だとすら思っていた。

 けれど、実際に来たシャルロットは知識、教養、周囲に対する態度どれをとってもダナース国の王妃として文句の付けようがなく、また美しくて聡明な女性だった。