(この匂い、懐かしい……)

 最初の人生で、エディロンはよくシャルロットを抱き上げた。その度にこの香りがして、暖かくて力強くて、とても安心したのを覚えている。

(あんまり、優しくしないでほしいな)

 エディロンは『仲睦まじさを示せるから』と言ったが、本当はシャルロットへの気遣いであることは気付いている。

 彼は昔からこうだった。一度目の人生でもさりげなくシャルロットを見守り、気遣い、優しくしてくれた。

 だからこそシャルロットはそんなエディロンのことを──心から愛していた。

 とっくのとうに粉々に砕け散ったと思っていたのに、忘れていた感情を思い出しそうになる。そして、〝ドブネズミ〟と言われたときの絶望感も。