アリール王子の手に握られていたバラの花びらが一斉に宙に舞い、やがてひらひらとに床に舞い落ち赤い模様を作り上げる。

 その瞬間、シーンと静まりかえっていた大広間に「わっ」と大きな歓声が起きた。

 パチパチとひとつ、ふたつ拍手が上がり、それはすぐに盛大なものへと変化する。

「シャルロット様、素晴らしい剣技でしたわ」
「本当に、びっくりしました。まさか王女殿下がこんなことをできるなんて」

 周囲で見守っていた人々が一斉にシャルロットに賞賛を贈る。

「お楽しみいただけましたか?」

 シャルロットは顔面蒼白なアリール王子をまっすぐに見つめると、にこりと微笑みかける。

「あ、ああ。もちろん」

 アリール王子はこくこくと頷く。

「ふふっ、それはよかったわ」

 シャルロットは大袈裟に喜んでみせる。