これはエリス国の騎士団が式典などで披露するために作った見せるための剣技だ。観賞用に考えられたものなので、全体的に動きがダイナミックで見る者を魅了する。

「ほうっ」

 周囲の人々から感嘆のため息が漏れるのが聞こえた。

 久しぶりに舞う剣技に手が震えそうになる。シャルロットは腕にぎゅっと力を込めて、必死に剣を振った。

(あと少し……)

 演技の終盤、シャルロットはアリール王子のほうを見る。
 まさか王女が剣を振るうとは思ってもみなかったようで、片手にバラを持ったままあんぐりと口を開けてこちらを見入る姿に溜飲が下がる思いだ。

(よし、最後!)

 これがこの剣技の最大の見せ場。もし手元が狂えば、大変なことになる。

 シャルロットはアリール王子が手に持っている切花めがけて剣を振るう。
 自身に剣先が伸びてきたのを感じ、アリール王子の喉から「ひいっ」と声にならない声が漏れてくるのが聞こえた。

 ──シュッ。

 赤い物が吹き飛ぶ。

 シャルロットはそれを見届けて、口元に笑みを浮かべると剣を下ろした。