(四回目の人生でわたくしに毒を盛った誰かには、心から感謝だわ。こんな男の妻になるなら、死んだほうがマシかもね)

 毎回、ただ単に『もう死にたくない』と思っていた。けれど、生きるなら素敵な人生にしないと意味がないと気付く。
 それがどんな人生かと聞かれたら上手く答えられないけれど、少なくとも目の前のこの男の妻という生き方ではないと確信できた。

 会場を見回すと、心配そうにこちらを見つめるエディロンと目が合う。シャルロットは『大丈夫』と視線で伝えると、自分の右手を見た。

(剣を握るのは久しぶりね)

 四度目の人生、朝から晩まで毎日のように剣を握って女性騎士になった。
 五度目の人生と六度目の人生──即ち今世でもよくジョセフから剣を借りて、ふたりで打ち合いをしていた。

 今は女性騎士ではないけれど、まだそれなりに剣を扱える自信はある。


「まず、アリール殿下にはこちらを」

 シャルロットは近くにかざれれていた装花から一輪のバラを抜き取ると、それをアリール王子に持たせる。