五歳前後と思われる子供が一冊の絵本をシャルロットに差し出す。「いいわよ」と答えたシャルロットは女の子を自分の膝に乗せ、その本を読み出した。
 それは、大きな大きなパンケーキを焼いた少年がそれを配りながら旅をするという不思議な童話だった。

「お嬢様。パンケーキって何?」

 子供のひとりがシャルロットに問いかける。

「ふわふわのパンみたいなケーキよ」
「ふうん。それ、美味しい?」
「ええ、とっても。わたくしも大好きなの」

 シャルロットはそこまで話すと、口の下に人差し指を当てて考えるように視線を宙に向ける。

「うーん、どこかに売っているかしら? 見つけたら、買ってきてあげる」
「本当? わあ、約束よ? 楽しみにしてる」

 子供は嬉しそうに笑顔を見せ、シャルロットに抱きついた。