エディロンはじっと考え込む。

 この報告書に書かれているシャルロット=オードランと、婚約破棄してほしいとエディロンに訴えたシャルロットがどうしても結びつかない。

「予算内で買い物しているだけならいいのだが……」
「え?」

 エディロンの呟きに、セザールが不思議そうな顔でこちらを見つめる。

「いや、なんでもない」

 エディロンはそう言うと、口を噤んだ。

 報告書とはあまりに違う人物像に、真っ先に思い浮かんだのは『彼女は実はシャルロット=オードランではなく、全くの別人である』ということだった。

(まさかな……)

 国と国が約束した政略結婚に全く別の人物を宛がうなどあり得ない。
 だが、エディロンの中でなにかが引っかかる。