帰りのHRが終わって、運動場
には部活動生の姿がちらほら見
える。



それを見て、私は真っ先に親友
の美仔のトコロに行った。



『美仔!今日も放課後つきあってー』

「またぁ!?しょうがないなぁ…」



呆れ気味に、美仔が言った。



『ありがとー』



ここ02週間くらい、この会話が続いてる。


美仔は私の01番の理解者だから…


美仔だから頼める願い事。



「志帆ぉ。準備出来たし行くよー」

『えっ;美仔!ちょっとまってよ』



先に行こうとする美仔を必死で
追いかける。



あっという間に着いた、いつもの場所…



中練の部活動生が練習をしている体育館。



『美仔ぉ、先輩いた?』



先に体育館に着いていた美仔に聞いてみる。



「んー…あっ、いたよ!」

『ホントに!?』

「うん。ほら、あっち」



美仔が指をさした方を見たら、ドリブルしながら軽やかに相手をよけている池澤先輩がいた。


池澤先輩は私より01つ年上で、バスケ部のキャプテン。


私が01年の時、仲良くなった美仔と一緒に行った部活見学で先輩に一目惚れをした。



それから01年たったんだけど…何の発展もなし。


廊下を友ダチと笑いながら歩いて行く先輩をただ目でおっていくだけの片想い。



01回だけ目があった事があるけど…多分、先輩は覚えてないと思う。



先輩はかなりモテる。



だから、叶わない恋として私は先輩を想っている。


想うくらいはいいでしょ?


今日だって…


体育館の周りには女の子がいっぱい集まってる。



みんな先輩を見てるんだよ?



私もその中の01人。


先輩は私の存在もしらないとおもう。



分かってるけど…


辛い。



こんなに辛いなら…


恋なんてしなければよかった。



30分くらいたって、バスケ部は休憩の時間。



先輩はメンバーと楽しそうに笑っていた。


その姿をみて私はまた…先輩をスキになる。



「やっぱり池澤先輩はバスケ上手いねー」


『あたりまえじゃん!』



美仔とのこの会話は何回目だろう?



美仔と喋りながら先輩を見ていると、コーチに呼ばれて振り向いた先輩。



『あ…』



一瞬…一瞬だけ目があった。


目があった時、先輩はこっちを見ながらニコって笑った。



夢…!?



今、起きたことを頭の中で整理するのが大変だった。



「志帆!今…先輩…。」



美仔もビックリしてる。



『う…うん。目があった…笑ってたよ!』

「すごいじゃん!!!!!」



美仔は自分の事のように喜んでくれた。



『ヤバい…。どうしよう!?』



あまりにパニックになってたから、美仔に笑われた。



多分…今の私の顔はかなり赤いだろうなぁ



それから…美仔と話していたらバスケ部は帰る準備をし始めてた。


いつもなら、もうちょっと話してるんだけど、今日は美仔が用事があるらしいから帰ることにした。



帰り道、


「志帆!今日はよかったねー」


『うん。』



思い出しただけで


またドキドキが止まらない。



嬉しかった



それと同時に…


先輩との距離が悲しかった。



もう二度と目が合うことがないかもしれない…


そう思うと涙が出てくる。



朝までは、分かっていた事なのに、



ただ…一瞬。


目があっただけで決心が揺らぐ。



片想いでいい…



そう思うことが出来なくなる。


気持ちをおさえきれない自分が嫌になって…今まで、我慢していた涙が流れてくる。



『美仔!忘れ物したから学校に戻る!先に帰ってて』



美仔には心配かけたくなくて
言ったコトバ。


流れてくる涙に美仔が気づかないように…


走って、今まで来た道を戻った。



忘れ物なんて嘘。


ゴメンね?美仔…。



明日にはいつもの


“北村 志帆”


に戻ってると思うから…



 
あれから走って来た道を戻っていると、学校についた。



部活動生もみんな帰っていて学校にはほとんど人がいなかったけど、



私はそんなことを気にすることもなく中庭へ歩いていく。



中庭には、一本の桜の木があって、



そこは…私のお気に入りの場所



そこに行くとココロがきれいになるような気がするから。



いつものように桜の木の下に行き、木を背もたれにするようにして座る…。



風が吹いて、花びらがぱらぱらと降ってきた。



空を見上げると夕日が沈み始めていて、それを見ると…さっきまで止まっていた涙がまた流れてくる。



誰もいない中庭の静かさがまた…私を不安にさせる。



たまっていたものを一気に出すかのように泣いた。



ちょっとだけスッキリして、



明日は笑顔で美仔に会えそうな気がした。



明日には…



明日には…いつもの…



“北村 志帆”



に戻ってるよ。



明日から、また…先輩を目でおう片想いが始まる。



それが今まで当たり前だったし、これからもそうなんだ。



だから、今日だけは…



今日だけは、私のわがまま許してね?



もう…夕日も沈んでしまって真っ暗だった。



泣いてすっきりした体を起こして…もう一度、空を見てみる。


星がキラキラ光っていて、それだけでも今は元気になれた。



『…明日からも頑張ろう』



独り言も、今は星達が聞いてくれてるような気がする。



ちょっとスッキリしたさっきよりも…またちょっとスッキリしたよ。



今日の朝よりも、ちょっとだけ…強くなったような気がした。



携帯を見ると、美仔からの着信が8件。


ビックリしたけど…美仔が心配してくれてるってことが、また嬉しかった。


それと同時に、美仔には今のこの気持ちを言わないといけないような気がした。



美仔からのメール、


【志帆ぉー大丈夫!?何か悩みとかあるなら相談してよー…心配だよ…親友なんだから、迷惑とか思わないんだよ?】


美仔にはなんでもお見通しなんだ。



ありがとう…ごめんね?



メールを見たら、また涙が流れて来た。