「紗和?大丈夫?」
部屋でふとんに丸まってた私を心配して入ってきたのはお姉ちゃん。
「音ねぇ・・・」
お姉ちゃんの名前は琴音。私は「音ねぇ」って呼んでる。
「また言われたの?大地と拓徒くんのこと。」
お姉ちゃんは私のことを家族のなかで唯一わかってくれる大切な存在。
「うん・・・・」
「大地」っていうのはおにいちゃんの名前。
大学生だった。将来がとても有望だった。
でも―
去年、取り返しのつかないことがおきてしまった。
私たち家族の幸せとおにいちゃんの夢をぜんぶ壊してしまった。
お兄ちゃんは交通事故にあって・・・・・
思い出したくない。信じたくない。
拓徒が関係しているってことも言いたくない。
「でもさ、拓徒くん、なにもしてないじゃん」
お姉ちゃんは言った。
そうだよ、なにもしてない。
なのに―
パパとママは拓徒を恨んでる。
「いつか、殺してやるんだ」って。強く願ってる。